序章-朝もやと電車

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 「ふふふ……」  一人でATMに笑いかける男がいた。  僕だ。 前田勇気だ。  一応、通報されない程度には笑いを抑えているつもりだ。  なぜこんなに機嫌がいいのか?  よし、それに答える為に  もしもの話をしよう。  もしも、東京から30日間、愛知辺りに逃げ出すとしたらいくらくらいの金がいるのだろうか? 交通費宿泊費食費etc……  合わせたらいくらになるのだろう。 僕はこう思う。  だいたい、40万もあれば余裕だと。  再び、ATMに向き直る。  残高紹介を要求されたATMはこんな表示をしている。 『400,000円』 『続いてお手続きをされる場合は、アイコンをタッチしてく……』  僕は再びATMに笑いかけ、お引き出しと表示された画面をタッチした。
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