桃色センチメンタル

Ⅰ

ガラガラっと私が扉を開く音と、教室からのざわめきがほぼ同時に私の耳に響く。

「おい、あの娘可愛くね？」
「モデルとかじゃねぇの？」

顔を赤らめコソコソと話をする男の子を見て、私はキョトンとした顔をする。

私と目が合った男の子の顔がさらに赤く燃え上がる。

普通にニコッと笑うよりも、キョトンとした無防備な雰囲気が男の子のハートを鷲掴み………。
長年の経験で分かってる。

教室の奥に固まっている女の子の方を振り向くと、女の子もぽーっとした目で私を見ていた。

女の子には、とびっきりの笑顔を見せる。

女の子にキョトンとした顔なんてしたら、ぶりっこだのなんだの嫌われちゃう。
これも、長年の経験。