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ずっと秀が好きだった。
荒れて沢山人を泣かせた時期もあった。
ようやく思いが通じて、
嬉しくてたまらなかった。
優しく笑う秀は
俺だけを見てくれている。
それだけで幸せだった。
高校にはいって秀は急に大人っぽくなって人気がではじめた。
秀は俺のだ。
今まで
見向きもしなかったくせに。
秀に言い寄ろうとした女は俺がことごとく潰した。
今となってはそれがいけなかったんだと、しか。
俺は秀を守りたい一心で秀の気持ちなんか全然考えてなかった。
秀が傷付いていることに気づけなかった。
自分は何をしていたのだろう。
一番大切な人を傷付けてまで何してたんだろう。
白衣のポケットからグシャグシャになった紙を出した。
もう何回読み返しただろう。
__どうか、お幸せに。
そう書いてあった文字は所々擦れて読むことすらできなくなっていた。
これだけの文字を秀はあの時どんな気持ちでここに描ていたんだろう
一言、やめてくれと言ってくれていたなら秀の痛みに気付けたかもしれないのに。
それすらしないで秀は耐えていた。
ずっとずっとずっと我慢して、耐えきれなくなるまで、
俺はバカだ。
「秀………」
無機質な電子音が響く部屋で
俺は涙を流した。
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