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一人の看護婦が、
ある病室を訪れた。
往診の時間なっても帰ってこない医師をさがしにきたのだ。
「あ、やっぱりここにいた。
先生?患者さんがお待ちですよ」
医師を見つけた看護士はその医師に近づいていく。
「……」
「先生?眠っていらっしゃるんですか?」
医師はベッドの横に顔をのせ、患者の手を強く握っている。
幸せそうな顔をして、
「あら、疲れてたんですね……でも先生!お時間ですから起きてください。」
看護婦がその医師の体を強く揺する。
「……」
患者の手を握っていないほうの手がベッドから滑り落ちた。
それでも、
医師が起きる気配はない。
「……先生?」
異変を感じ取った看護婦が医者の脈を取る。
冷たい手。
「…え?…嘘…、」
口に顔を近付けてみても息をしている気配はなかった。
「先生!!」
ナースコールを押そうと立ち上がるとその刹那、横にあった機械も音を立てた。
「心肺、停止…」
END.
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