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ここに一人の男がいた。
哀「何か売れそうなもんはないかなぁ?」
哀雄山(あい ゆうざん)。この物語の主人公だ。
哀「出来たら、親父にバレないくらいの小物で、高い値の付くのがいいんだけどなぁ?」
商家生まれの哀は、家族に内緒で、艶本を購入する為の資金集めに、家の蔵を物色していた。
「哀さん?」
隣家で医師を営む、りんの家からは、哀の愚行が丸見えだった。
哀「あれ?りんちゃん…。どうしたの?また構われに来たの?」
哀は、動機を悟られないように、りんをからかって見せた。
りん「…やぁねぇ…。家族の中に盗っ人がいるなんて知ったら…。きっと…哀さん、市中引き廻しの上、磔獄門(はりつけごくもん)だよ♪」
にっこりと嬉しそうに言うりんに、哀は背筋が凍く思いをした。
哀「ぬ、ぬ…盗っ人なんて…とんでもないですよ!いや、あれですよ!ホラ、大切な我が家の宝物(ほうもつ)を…きちんと見張らないと…。ね?ホラ、どこから賊が来るか、判らないでしょ?」
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