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初めて会ったばかりというのに、2人は手を繋ぎ歩いていた。
「やっと会えたね」
「ね」
「僕でいいの?」
「うん」
ナミエの腕がヨシキの左腕に巻き付く。
タクシーに乗り込み、「Bホテル」と告げながら、ヨシキは思う。
ナミエと自分をこうして結びつけたものは、言葉だ。
優しく、そして濃厚な言葉のやり取り。
それはどちらか一方だけの言葉では続かない。
ヨシキの言葉にナミエが反応し、ナミエの濃厚な言葉がまたヨシキに返される。
タクシーの後部座席で、ヨシキの手はナミエの手を離れ、ナミエの太ももに移動する。
どちらかが冷めたり、途切れたりすれば、こうして手を繋ぎ合ってホテルに向かうような現実は起こりはしなかった。
ナミエの脚がびくんと震え、閉じる。
ヨシキは前方の景色を見るが、左手はナミエの太ももの内側に滑り下りる。
「やん」
ナミエが小さく囁き、ヨシキの左腕を軽く叩く。
しかしヨシキの手は止まらなかった。
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