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パタム、と生徒会室の重厚な扉を閉める。
立ち上がってみてやっと分かったのだが、この転校生、俺よりも少し高い。
本当に日本人かコイツは。
「――お前、一宮照彦だろ?」
「は?」
「一宮財閥一人息子の一宮照彦だろって聞いてンだよ!つべこべ言わずに答えろやドアホ」
青天の霹靂とはまさにこのことで。
耳に付けたピアスを弄くり回しながら聞いてくる転校生、久賀には先程の好青年ぶりは全くなく――あるのはただ傲慢な物言いと見下すような視線。
「ったく、だからお坊ちゃまは相手したくねぇんだよクソが……」
な、なんだよこの豹変ぶり!
まるで人懐こい猫が実はライオンだったようなショックだ。
久賀はチッ!と舌打ちするとすぐ近くの階段に俺を抑えつける。
って、えぇぇぇぇっ!
180越えの大男二人がこんなのおかしいだろ!……く、久賀はもしかして!
「久賀、お前、俺に抱かれたいのか?」
確かに俺が入れ食い状態の絶倫俺様な生徒会長だが……久賀は抱ける気がしない!
「はぁ?なんでお前に抱かれなきゃなんないの」
ですよねー!
こんなタッパのある奴がネコなわけねぇよな。
じゃあこの姿勢はなんだ。
「俺は、お前を抱きたいの」
その瞬間。
俺の毛穴が一気に開いたような鳥肌に襲われ、久賀の鋭い瞳に射ぬかれたように身体は麻痺し、バクバクと心臓は高鳴ってそして――
「わかる?」
ダダダダァーン!
と、“運命の扉が開く音”がしたのだった。
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