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(一宮Side)
……顔がすごく熱い。なんでだ、まだ夏は来ていないのに。
ちなみに今は、理事長室前だ。
結局さっきの発言はあれよあれよと流されて「クラスの行き方わからないから」と待たされてしまっている。
ダメだ、なんで今日はこうも調子が出ないんだ!
俺様ヤリ〇ン生徒会長の一宮照彦、一生の不覚だ……ッ!
そんな時、ブルブルと携帯が震えた。
画面を見ると“津崎”と書かれている。
メールだ。
中を開いて見ると……
“一宮、久賀って昔天才ピアニストだって散々騒がれた久賀裕一の弟だって!”
と書かれてあった。
「久賀、ゆう、いちの……?」
久賀裕一。
懐かしい名前だ。
俺がこの輝かしい人生の中で唯一敗北を喫した男。
神童と騒がれ、モーツァルトに愛されショパンに祝福された天才と呼ばれた男。
……その、弟が久賀なのか……?
確かに、薄ぼんやりとした久賀裕一の記憶は……久賀裕也に似たところもあった気がするが。
神童だと奉られた彼は何時も影を纏った表情をしていて……。
そして、彼の奏でる旋律は、甘美でほんの少しだけ、悲哀を含んでいて。
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