序章

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その彼の隣には、くすんだ金髪をさらさらと揺らしながら、同じく馬上で悪戦苦闘している少女が一人。 彼女の名前はエステル・シーノイ。 透き通るような白い肌に、何といっても特徴的なのが、優しげな印象を醸し出すマリンブルーの瞳だ。 旅装束のマント姿の上に浮かんでいる表情は、アーサーの様に強張ってはおらず、楽しげだ。 彼女の年齢もアーサーと同じく17才。 この二人には神殿から「テンプル・ガード」という称号が贈られている。 異世界に馴染みのないオレには、よくわからないが、かなり大変な代物らしい。 今回のエピソードはこの称号に大きく振り回されるんだが、それは後でゆっくり話そうと思う。 さて、この危なっかしい二人を見守るように優しく微笑んでいる少女が、メルヴィナ・ラプティス。 背中まである長い黒髪を風にゆらしながら、魔法使いの証のロッドを腰にさし、背筋をピンと伸ばして馬を歩かせている。 このロッドは通常のものより短くて軽いらしく、彼女用に特注しているとの事だ。 普段はソフトレザーに魔法抵抗力を持つ丈の長いマジックローブ姿だか、今は移動中の為、通常のマントを羽織っている。 アーサーから一番遠い位置で馬を歩かせているのが、最後に紹介する4人目、ダリウス・ヴァリエート。 黒髪、黒眼でアーサーよりも少し小柄な少年だ。 体格の割にはゴツイ長剣を腰に佩(は)いており、そうは見えないが軽々と扱える膂力(りょりょく)を持っている。 彼一人だけ金属の鎧(チェインメイル)を着込んでおり、更に日中の日差しが容赦なく彼を襲っている為、マントで体を覆ってはいるが、暑さで『ぐで~』とダレてしまっていた。 この二人、見た目はアーサー達と違わないくらいの年齢に見えるのだが、れっきとした二十二歳の大人なのだ。 しかも冒険者ギルドに中級クラスとして登録されているやり手のハンターだというから驚きだ。 この恐るべき童顔コンビは同郷の出身らしく、ダリウス云うところの「腐れ縁」らしかった。
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