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ナツカは毎日、母(祖母)に連れられてどこかに出かけた。時間は決まって朝の7時。
こんな田舎のどこが楽しいのか、なんて思う。
でもナツカにとってそれは貴重な体験であり、すべてが輝いて見えたのだろう。
8時を過ぎると帰ってくる。そして手早く朝食の準備をする母を横目に、私はひたすら扇風機に当たり、真夏の暑さを少しでもやわらげようとしていた。
『涼子さん、私にも貸して』
ナツカが申し訳なさそうに言う。
暑さに耐えているその小さな体からは、Tシャツを軽く湿らせている。
『いや』
躊躇する事もなくその一言を言った。ナツカは頬を膨らませて私を睨む。
『涼子さんだけずるい!』
『子供は我慢よ』
冷たく言い放つ。
ナツカは『ふんっ』と首を逆に振った。
『うそ、半分ずつね』
そう言うと扇風機の前に満面の笑みで寄ってきた。
『半分ずつだね』
ナツカは嬉しそうに笑って、隣に座った。
紗枝の子供じゃないみたい。そう思った。
そんなやり取りを微笑ましく、母は見ていた。
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