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『涼子さん』
ニッコリ笑うナツカを見つめる。
綺麗なストレートの黒髪に、色白の肌、くっきりした二重に長い睫毛…
どれをとっても綺麗な顔立ち。
あれから10年もの時が経った事を知らされる。
一瞬で記憶が蘇った。
『ここじゃなんだから、家に入りなさい』
穏やかでゆったりとした口調で母が言う。
そして足早に台所へと向かう。
ナツカは素早く白色のかわいらしいサンダルを脱いだ。
眠気がまだ襲う、ふわふわした頭と体で私もナツカに続いた。
母はもう麦茶を用意して座って待っていた。
ナツカは大きい荷物をゆっくり畳みに置いた。
そして一気に麦茶を飲み干す。
『はぁ~おいしい』
おっさんか!
突っ込みを入れたくなったけれど、眠気が覚めないからやめた。
『1週間お世話になります!』
元気よく言うナツカに母はニコニコして頷く。
『涼子さん、よろしく!』
その笑顔からは想像を超える痛みや苦悩をナツカは抱えていた。
それを知るのはまだ先の話。
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