最期の時間

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ドアに手を置いて、また、項垂れてしまった。力が入らなくなり、ズルズルと身体が下がっていく。その場に蹲ってしまった。 はああ、と声にならない思いは溜め息となる。 カァーンカァーンと金属音が響いた。 誰かが、階段を上ってこっちに向かてってきているのが分かった。 ナオかもしれない。 蹲ったまま、階段を見つめてしまった。 だけどのぼってきたのは、茶色い髪をした若い見知らぬ男性だった。 違うのかと思うと、また、力が入らなくなる。 だけど、このままだと不審者みたいだ。足に力をいれ、よろよろと立ちあがった。 若い男性は、隣の家のドアに鍵をさしたまま、私を見ていた。 「具合、悪いんですか?」と、彼は声をかけるものだから、慌てて否定する。 「あ。いいえ、大丈夫です」 「この前、そこの家の人も運ばれたからね。今、ぎょっとしちゃいました」 勘違いしたことを隠すように照れ笑いをした。
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