最期の時間

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ドアをノックした。 だけどなんの返事もなく、そっと、ドアを開けた。2つのベッドが前後に並んでいるのが見えた。 手前のベッドは空いていて、奥の窓際のベッドには、人がいるのか布団が盛り上がって見えた。 夕暮れの西日が、それをオレンジ色に染めるだけで、シンとしている。 「ナオ?」 ドアの手前、蚊の鳴くような声で呟いた。 なんの反応もない。 少しずつ、近付いて、ベッドの手前で足を止めた。 目をつむっている、ナオがそこにいた。 「ナオが、いた」 布団からでた、彼の手をそっと握った。 握り返してくれなかった。
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