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(……亜希を犠牲にして、アイツは何を手に入れたんだ?)  高津の目的が見えなくてイライラする。  久保は携帯電話を取り出すと、内田へと電話した。 『久保セン?』 「よお、元気にしてるか?」  街の雑踏の音が聞こえる。  どうやら外で電話を受けているようだった。 「ちょっと良いか?」 『ええ、良いですよ。』  久保は手短に警察が来た旨と、高津と理恵の事件について聞いた旨を話した。 「……それについて、何かアイツから聞いてないか?」 『え……っと……。』  吃る内田に「事情を知っているな」と判断すると、久保は少し声を低くする。 「……亜希が心配してるんだ。」 『あ……、うん。』  それでも歯切れの悪い内田に「口止めされてるのか」と訊ねると、「そう言うわけじゃないけど」と返してくる。  ――いまいち、煮え切らない態度。  久保はイラついて「理恵ちゃんにまで、危害を加える気なら、警察に全部話すって高津に言ってくれ」と口にした。 『――そ、それは無いよッ! 理恵ちゃんに危害だなんて、高津さんは絶対に加えないッ!』  その言葉についカチンとくる。 「……絶対に?」  ――いつの間にか。  内情を知っているはずの内田まで、高津の肩を持つようになっている。  久保は自然と声を荒げていた。 「――どうして、そう言い切れるんだ?」 『どうしてって……。』 「――相手はあの高津なんだぞ?」  内田はその刺々しい声色に再び吃る。 『……そ、そりゃ、あの人、やる事為す事、無茶苦茶ですけど。』  そう言いながら、内田は自分が意外なまでに高津に信頼を置いている事に気が付いた。  あんなに殴り飛ばしてやりたいと思っていた相手なのに、今では久保に対して「あの人、嘘だけは吐かないんです」と説得さえしてしまっている。 『――都合の悪い事、言わないのも確かですけど、言ったことは絶対に守ってくれるんです。だから……。』  ――信じてほしい。  高津が理恵に対して何か危害を加えるような事は、決してない事を。  そう言いながら、内田は胸の奥が何故だかツキンと痛んで苦しくなった。  ――どうして。  自分はこんなにも必死に弁解しているのだろう。  目を伏せると、あさ美の顔がちらつく。
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