序章~闇の世界~

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大暗夜時代。 人々は数百年前から続くこの世界を、そう呼んでいる。 昼より夜が一日を支配する。 何故、このような世界になってしまったのか。天文学者の多くは原因を追及できずに頭を抱えている。 一方、宗教方面からは、『神の怒り』や『悪魔の降臨』、『世界の再創造』とも言われている。確かに、そう言われてみないとしっくりこない現象が世界各地で起こっている。 その中でも特異なのが、ある物体の出現だ。 “闇の使者(ダーク・トークン)” まるで人間の影が三次元的になったものだ。切り取られたように白いものが目と口を形成している。 ただ、人間よりも大きい3メートルを超える大きさを誇る。 闇の使者は人間の『負』の心。憎しみや恨みから生まれる人間の『負』の部分が原因で出現する。行き場の無くなった憎しみの矛先はどこに行くかわからない。故に、闇の使者は無差別に人間を襲う。 「きゃああああ!!」 今夜もまた、人間は闇の使者に襲われる。 今、追われているのは地元の女子高生だ。目に涙を溜めて必死で逃げるが、闇の使者の身体能力は逸している。そもそも、闇の使者には身体能力という概念がない。己が持つ『負』の心の塊が無くなるまで人間を追い続ける。 「ア…ギィ…」 「ひ…嫌…」 人間の発する声とは思えない声を発しながら闇の使者は手を伸ばす。どす黒い手は肥大化しながら少女の頭上まで迫る。 少女はもう駄目かと思った。 その時、一線の光がどす黒い手を粉々に砕いた。 「ゴギィアアアアア!!」 闇の使者は叫び声を上げながら後ろに数歩下がる。
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