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少女は前方を見る。
コツ…コツ…、と聞こえてくるのは人間の足音。僅かな月明かりが足音の正体のシルエットを映し出す。
シルエットは男子高校生だ。ブレザーにネクタイの姿は、いたって普通の男子高校生の格好に変わりない。
しかし、その右腕を見た瞬間、その考えは吹き飛んだ。
「……」
その右腕には、月明かりによって黒い輝きを放つ重装甲。男子高校生の右腕に固定されるように装備されている。
男子高校生は、重装甲の先端を闇の使者へと向けると、何かのトリガーを引いた。同時に、重装甲の先端から青白い光が放たれ、闇の使者の左肩を撃ち抜いた。闇の使者は叫び声を上げ、撃たれた左肩から下の腕は砂のようにサラサラと空気中に消えた。
よく見ると、重装甲の先端は銃口のような円形の穴がある。さながらロボットのライフル型の武器のようだ。
男子高校生が最後に頭を討ち抜くと、闇の使者は完全に消滅した。
男子高校生はそれを確認すると、踵を返して歩こうとした。
少女は思わず呼び止める。
「あの! 助けてくれてありがとうございますっ!」
「…無傷なら、それで構わない」
男子高校生の声色は、まだ小さな少年のような名残があった。
しかし、どこか機械的な口調だ。
「せめて名前を…」
「俺の名は、助けた相手に言う程大層なものじゃない。また奴らが来るかわからない。すぐに帰るんだ」
男子高校生はそれだけ言うと、暗闇の中に消えて行った。
これからこの世界は牙を剥く。それに立ち向かう為に────。
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