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5月上旬。
場所は緑丘市。
栃木県北部の山岳地帯を切り拓いて開拓した地方都市だ。
地方都市と言っても、人口の7割は25歳以下に治まるという比較的若い都市なのだ。
首都圏に比べると、高層ビルや施設は少ないが、若い都市だけあって、学校や学校関係の施設が多い。学生寮はもちろん、希望があれば中学生から一人暮らしもできる。
所謂、奨学金のような資金が一人ひとりに配られるのだ。
「刹那。昼飯にしようぜっ」
「そうだな」
ここは緑丘高校。
緑丘市でも最南端に近い位置にある。
中高一貫校である緑丘高校(以後、緑高)は、生徒数もそれなりに多い。
高等部2年4組の教室の一角で二人の男子生徒が会話を交わした。
元気に声を掛けたのは、空城修介(ソラシロシュウスケ)。
無表情で答えたのが、蒼海刹那(アオミセツナ)。
彼らは親友で、小学生以来の幼馴染みでもある。
「お前一人暮らしなのによく弁当作ってくるよな」
「むしろ、一人暮らしの方が割合的に自作弁当だと思うが」
「俺は寮だけど、食堂があるから自炊しないし」
「少しはやったらどうだ?」
刹那が問うと、修介はジト目で刹那を睨む。
刹那は特に動じることなく、声を掛ける。
「何だ?」
「自炊スキルを付けなければ、女の子が俺の部屋に来て料理を振る舞ってくれる、というフラグが立たないじゃないか」
刹那は無表情だった顔を僅かに崩して、小さく溜息をついた。目の前では、「言ってやったぜ!」とでも言いたげにドヤ顔を決める修介。
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