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「そうですね、日本人の感性はあまり理解されない」 ジョン曰く"謙虚さ"を全面に押し出した憂いた笑顔を作って、私は傘を元の位置に戻した。 「例えば雨の日の桜の幹は黒く濡れて、桜の花弁を引き立てること」 さっきまでジョンが眺めていた大木の幹に近づいて、花弁を一枚、幹の上に乗せてみせる。 「濡れた花弁はとても色気があること」 にっこりと笑って見せると、惚けた表情の男が一匹釣れていた。 近づいてきた男に腰を抱かれたところで、ネクタイを思いっきり引っ張ってやった。 「…日本の女は腹ん中じゃ何考えてんのか分かんないこと。 ――案内、終わんないからさっさとしろよガキ」
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