紅茶

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南側旧校舎は木造で陽当たりは良好。 昼に遊びに行く分には、堪らなく心地良い場所だ。 夜行くとなると色々と話が変わってくるけれど、行くことはない、というか行く勇気がないのでそれはまあ置いておく。 私が言いたいのはそう。 一等陽当たりの良い一階の角部屋が、国語準備室だということ。 そして主が居るその部屋こそが心地良い場所だということ。 「先生こんにちは」 春先にしては暖かい今日。 国語準備室のドアは開け放してある。 そのドアを軽くノックして部屋を覗くと、案の定、先生は寝ていた。 足音を殺して近づく。 その分、心臓の音がだんだん大きくなる錯覚。 手を伸ばせば届くという距離で、ふわりと紅茶の香りが鼻を掠めた。 中庭にある自動販売機のそれとは別格の芳しい香りは、最初のころ、紅茶だと分からなかった。
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