紅茶

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「今日のはアナタの嫌いなヤツですよ」 マグカップの中を覗こうと身を乗り出した瞬間、先生のくぐもった声が私を制した。 緩慢な動作で突っ伏していた上半身を起こして、細いフレームの眼鏡を装着すれば完璧に国語教師になってしまう。 だから、眼鏡のフレームをそっと掴んで、まだ『先生』にならないでほしいと願いを込めた。 「飲みたい」 「だから、香り。わかるでしょう、ノヴァ」 「いい。今日は飲めるかも」 一瞬、先生の頬が引き釣ったのは、この際見なかったことにする。 「…冷めてますから、淹れ直しましょう」 「す、すいません」 正直そこまでしてくれるとは思ってなくて、思わず直立してお辞儀すると、息が洩れるように笑った気配がした。
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