携帯電話

5/9
前へ
/34ページ
次へ
「ばあちゃん」 「んん?」 「コータローさんってだれ?」 ばあちゃんは一瞬石化した。 でもぼくが回復魔法を使うよりも早く、元に戻ってまた笑った。 今度はちゃんと。 「じいちゃんの名前だよ」 「コータローさん?」 「そう、孝太郎さん。ばあちゃんは一回も呼べなんだけどなあ」 「…じいちゃんが呼ぶなって言ったの?」 「いんや」 続きが聞きたくて繋いだ手をぶんぶん振ると、ばあちゃんはギュッとぼくの手を握って。 言った。 「恥ずかしくて呼べなんだ。じいちゃんも頑固者で、お互いに面と向かっては一回もなあ…」 オミアイケッコンやとそんなもんや、とばあちゃんは言う。 やけど、それなら。 「…なんで泣いとんの……?」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加