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また朝がきた。
鐘の直前にいつものように着く。
今日は机に異常はない、上履きも昨日ゴミ箱から戻しておいたが下駄箱に収まっていた。
後からもっと酷い目にあうのだろうか、もうなれっこだ。うなだれる視界の端に昨日声をかけてきた奴が苦虫を噛み潰したような表情でいたのが気にかかった。
放課後
結局今日は何もされなかった。
明日にもっと酷い目にあうのか。
憂鬱だが仕方ない、今日を平凡に過ごせたことを感謝しよう。
鐘の音
着席
放課後
この一週間平和だった。
もう安心していいのだろうか。
教室を出て昇降口へ向かう。
僕より早く教室を出たはずの委員長がまだ下駄箱にいた。
僕の方をちらりと見て(何かを期待したような光が見えた気がした)うつむきながら廊下に戻って行った。
鐘の音
着席
委員長は休み
珍しくクラスメイトに話しかけられる、たわいのない話をして去って行った
放課後
僕の靴はある。
休んでいる委員長の上履きはない。
鐘の音
着席
委員長が久しぶりに学校に来た。
皆の顔を眺め、最後に僕の方を向いた。
少し困ったような顔をした後
彫刻刀を取り出し
自らの喉笛に突き立てた
抉りこむようにねじり入れ
赤で床を染めながら
苦しさを微塵も感じさせず
綺麗な笑顔で倒れ伏した。
ほどなくして救急車に運ばれた委員長は病院に辿り着いた頃にはこときれていたらしい。
葬儀
クラスメイトは、うつむくばかりで悲しむでも涙を流すでもなく、ばつが悪そうな雰囲気だった。
僕はそんな彼らを一瞥した後、委員長を見にいった。
いつかの質問された時の僕みたいな無表情で棺桶に横たわる委員長を見て、見ないふりをしていたアレやコレがつながってしまって、あとにはもう目から水が止まらない僕しかいなかった。
その日を境に
いわゆる『除け者』はいなくなった。
平凡で平和で平坦で。
ただいなくなったものに不平等。
僕は今では鐘の音よりずっと前から教室にいる。
どこかのだれかがきがつかないだれかをすくったように
僕は誰もいない教室で花瓶に水を注いだ。
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