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【ソレ】は確かにそこに『ア』りました。
真っ暗な部屋の中、壁にもたれ、半開きの目でワタシを見るのは、間違いなく【 】の言っていた【ソレ】
恐らく何年も切っていないだろう、膝元まで伸びた髪。
いつの時代かも分からぬボロ布のような服。
そして、腐海のように濁りきった、目。
ワタシは、とても こわかったのですが
なぜだか【ソレ】のめをみていると どうしようもなく
ひきよせられてしまい
一歩、また一歩と【ソレ】に向かって近づいて いきます。
距離が縮まるたびに
不快な香りが鼻をつきます。
それでもワタシは歩を進め
【ソレ】とワタシはてがふれあえそうなほどちかくに
それでも【ソレ】は動く様子もなく
もはや生命を終えているのかと、ただ前だけを見て【ソレ】は死んだのかと
そう思うとなんだか悲しくなってきて
ワタシは【ソレ】を床の上に引き倒し
その感触を確かめるように
腐海を宿した地表を
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も踏みつけて
床一面に赤いスープができた頃
ゆっくりとその部屋をでました。
何日もたって
暦が変わっても
ワタシについた【ソレ】の匂いは鼻腔の奥でくすぶっていました。
いつまでもいつまでも
腐海のように
フカイなように
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