そこにキス

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「……ねぇ。千花さん」 「なに?」 彼の手が私の手をとって次は甲にキスをする。 「千花さん下さい」 「……なにを?」 「千花さんの全部。忘れられないことも忘れられないまま受け止めますから」 「受け止めるって……」 「年下嫌いで、田原さんが好きでもいいです。いつか変えるから」 真っ直ぐな気持ちが私をくすぐらせたのか、笑いが零れてしまった。 「千花さん。またそうやってごまかすんですか?」 私はかぶりを振った。 「……違うよ」 「違う?」 「田原さんのことで哀しい顔してたんじゃないんだと思う」 「え?」 「それはきっと、広重のせいだよ」 私だって、そんな顔してるなんて気づかなかった。 本当に広重はいつだって私をよく見てる。 「それって?」 うんと頷く。告白だよと言いたかったけど恥ずかしくて声にならない。 視線をそらしたくて俯いた。
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