そこにキス

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「千花さん、顔あげて。俺を見て?」 「い……今、無理」 ガラにもなく顔がたぶん赤い。だってこんなのって本当に久しぶりだ。 ううん。自分から気持ちを伝えるなんて始めてだ。 だけど広重は簡単に私の顎先を彼のほうへ向けさせる。 「千花さん、顔真っ赤」 「……」 「好きって言って下さい」 「……無理」 「俺、いなくなっちゃいますよ?」 「やっ……やだ」 そう言うと嬉しそうに微笑んだ。 広重の手の平で転がされてるみたいなわたしの気持ち。 ふわふわして自分でもうまく掴めない。 「俺、どれだけ待ったと思います?」 ハァと短いため息。 「じゃあ好きって言わなきゃキスしますよ?」 「えっ?」 「キスと好きどっちがいいですか?」 意地悪すぎる。だけど、ずっと待ってくれてた彼に、やっぱり伝えないといけない気がするんだ。
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