そこにキス

21/21
前へ
/552ページ
次へ
あれだけ冷たい態度をとったって、こんな可愛げのない私だって受け入れてくれたのだから。 「タイムアウト」と、広重は私にキスをした。 「は……早すぎるよ、広重」 「もっとゆっくりキスしたほうが良かったですか?」 「そうじゃなくて」 「じゃあ?」 好きって言おうかと思っていたのにってこと。 やっぱり言えなくて、「……何でもない」と、すねた様に呟いて広重を見た。 素直になるって、緊張するから。 「……上目遣いずるいなぁ」と、広重は私を抱きしめた。 「可愛すぎ。俺、すねてるのに嬉しいみたいな変な気持ちですよ」 「へっ?」 抱きしめていた腕を緩めて、私を見つめた。 「じゃあ千花さん?」 「うん」 「ここ俺が予約してもいい?」 そう言って、唇が触れた。 左手の薬指に温かな花が咲いたみたいだった。
/552ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21479人が本棚に入れています
本棚に追加