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あれだけ冷たい態度をとったって、こんな可愛げのない私だって受け入れてくれたのだから。
「タイムアウト」と、広重は私にキスをした。
「は……早すぎるよ、広重」
「もっとゆっくりキスしたほうが良かったですか?」
「そうじゃなくて」
「じゃあ?」
好きって言おうかと思っていたのにってこと。
やっぱり言えなくて、「……何でもない」と、すねた様に呟いて広重を見た。
素直になるって、緊張するから。
「……上目遣いずるいなぁ」と、広重は私を抱きしめた。
「可愛すぎ。俺、すねてるのに嬉しいみたいな変な気持ちですよ」
「へっ?」
抱きしめていた腕を緩めて、私を見つめた。
「じゃあ千花さん?」
「うん」
「ここ俺が予約してもいい?」
そう言って、唇が触れた。
左手の薬指に温かな花が咲いたみたいだった。
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