誘われない花見

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まあ、広重だって私を恋愛対象になんて見ていないだろう。 目の前で納豆を食べて微笑むくらいだから。これから色恋沙汰なんて起きるはずがない。 私は知っていた。 陰で『鬼千花』と呼ばれていることも。 だから故意的に誘われなかったのだろうと。 去年の花見だってそうだ。 残業が終わって、帰りが一緒になった田原さんが「花見、顔だけ出すかな。遠山も行くか?」と誘ってくれたから、それに着いて行っただけだった。 誘われてなどいなかった。 それはそれでいい。 だって、仕事が出来てお給料が貰えて暮らせればいいのだから。 そうして、仕事に打ち込んで細かいことは気にしないでいきたいと思っていた。
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