梅雨、ざわめく心

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それなのに、心に火が付いたみたいだった。 それは、きっと彼女の整った顔立ちのせいかもしれない。 そして、自分に手をぬかないメイクと、服装。 ふんわりと巻かれた髪の毛。 一見しっかりした女の子、といった印象なのに、話してみると、それを裏切るおっとりした性格。 それが、ときたま可愛げで男から見たら、少し小悪魔要素を含んでいそうで恐かったんだ。 彼女のことなら、好きになってもおかしくないと私でさえ思うから。 変わってしまったのは、私だった。 「おはよう」と言い放って、首に下げてたセキュリティーカードをピッと押し当てた。 「おはようございます」という声が慌てたみたいに聞こえた。
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