誘われない花見

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「えっ?」 「みんなで花見行くの嫌なら、俺と2人で花見。どうですか?」と片手をよく見ると、いつもの鞄にコンビニの袋。 少し重く見えるのは、缶ビールの銘柄が見えるからかもしれない。 「広重と?」 「行きましょう」 繋いだ手には力がこもる。こんなところ、他の社員に見られたら誤解されてしまう。 只でさえ噂のネタになりやすい彼なのに。 巻き込まれるなんて、まっぴらごめんだ。 「わかったよ。お願い。手、離してくれない?」 「そう言って千花さん逃げるつもりでしょ?」 「逃げる理由なんかないでしょ?」 「本当に?」と広重は言った。 「本当だけど」 上下に手を振って離した。広重は笑った。 「千花さん、可愛い」って。 なんて言葉に重みを置かない男。軽すぎて嫌になる。 だから、年下は嫌いなんだ。
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