誘われない花見

18/31
前へ
/552ページ
次へ
「2人で乗れるかな」なんて田原さんが言うから試しに乗ってみた。 勿論、一台の自転車に乗る場所なんて決まっていて、田原さんは前に。私は後ろの荷台に。 あの日も今日みたいなタイトスカートだった。 「パンクしたら遠山が弁償だからな」と意地悪く言う声もドキドキが勝ってしまって上手く返事が出来なかった。 川沿いに咲く桜並木の坂を下りながら、時折、触れてしまう彼の背中に、またドキドキが治まらなくなる。 「綺麗だな、遠山」 「ですね」なんて膨らまない会話。 それを昨日のことのように、毎晩、毎晩思い出して。 そう。 今日まで生きていたというのに。
/552ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21479人が本棚に入れています
本棚に追加