誘われない花見

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「ていうか、千花さんと見たかった」 私は見上げていた顔を思わず広重に向けた。広重も見上げながら鼻歌を歌っていた。 確か、夏真っ盛りなラブソング。 「それは、季節外れだね」 「桜がですか?」 「ううん。その歌が」 広重が笑いながら、「じゃあ。ベンチにでも座ります?」と言った。 「ベンチか…」 「俺的には滑り台の上がいいんですけど」 確かにそれは同感だ。 横幅のあるトンネルみたいな滑り台の上なら余裕で座れるし、桜だって触れる。 花見らしくない場所でやるなら、座る場所だって変えてしまえばいいのだ。 見上げるより、花弁の軍団と同じ目線で見たってたまにいいだろう。 だって、疲れないじゃん。そのほうが。 ていうか、花見って最終的に桜の存在忘れてる気がするし。
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