誘われない花見

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急に肩を抱き寄せられた。 心臓がふわっと浮いた感覚にまず驚いて、次に横を見たら広重の顔があまりに近くて言葉を失った。 「千花さん。これならいい?」 「へっ?」 「こうやってくっついちゃえば寒くないと思います」 「くっつくって……」 戸惑っている私なんか関係なさそうに「なんか温かくなってきた」と笑うから、強く言い返せなかった。 「そりゃね」とだけ言うと、調子に乗ったのかまた私を強く抱きしめた。 「ずっと、こうしていたいです。千花さん」 耳元で囁かれるけど、「広重、焼き鳥食べたい」と言うとあっさり手が離れた。
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