事件

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警察署内、2人の刑事がホワイトボードを眺める。 第一発見者に聞き取りをした新米刑事の広田と、遺族と対面した定年間際の井元だ。 定年前の一仕事として新米教育係を任されたが、どうもこの今風な若者にはついていけないところがある。 このひと月に、7人の男性が同じく窒息死により電車内で亡くなっていた。 「死因は窒息、まわりに大勢の人がいるのに、気づいた人がいない」 「だけど、みんな死に顔は明らかに苦しんでましたよね」 井元は眉間にシワを寄せる… こんな話をしながらハンバーガーにかじりつく新米が、やはり理解できない。 状況的にみても事件性は考えられず、捜査本部もおかれないこの事件、発見者や遺族への形式的な聞き取りで書類上の捜査は済み、特段取りだたされてはいなかった。
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