月の海から

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俺は仰向けでベッドの上で目覚めた。   鼓膜を圧迫する耳鳴り。 不協和音となって鳴り続けるベル。  ”ジリリリリン” どうやら目覚まし時計の様だ。 俺は脳髄を刺激し続ける、不愉快な目覚ましを止める。 辺りは明るく、すでに朝日が差し込んでいた。 寝惚けた頭で記憶を探る。 俺の名は春輝(はるき)吉岡春輝だ。 今は2020年、東京。 新世紀を迎え日本は、いや世界は、画期的に発展していた。 ふと、時代錯誤した目覚ましに目がゆく。 今時、こんな時代錯誤の目覚ましを使っているのは俺位のもんだ。 周りからは、爺臭いからやめろって言われるんだが・・・ どうもこれでないと駄目なんだよな。 俺なんかは、アンティークな感じがして、好きなんだが。 それはさて置き今日は伯父から、伯父さんが経営するシンフォニー・リュームに招かれた、招待状が来てたんだった。 シンフォニーリュームと言うのは、簡単に言えば、海の中にある水族館だ。 只水族館と違うのは、泳いでいるのは飼われた魚じゃなく、自然のものだが。 水族館とテーマパークを合わせたものを、想像すると良いだろう。 これは伯父さんが考え出したもの。 伯父は、何と言っても吉岡カンパニーの社長なのである。 吉岡カンパニーは、日本の80%の物流シェアーを占める大企業である。 俺が子供の頃はよく一緒に遊んで貰ったもんだ。 それが今や吉岡カンパニーの社長だもんな。 でっその三男、うちの親父の弟でもある人がまた凄い。 英樹画伯その人だ。 まったく嫌になってくる。 いったい家の親父は何をしてたんだか。image=185363836.jpg
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