Chapter 1

2/3
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「では御注文を確認させていただきます。Aランチの三番がおひとつ、以上でよろしいですか?」 いつものように決められた言葉を、客に繰り返し確認する。 バイト先は学校から一分もかからない場所にある。 しかし家からは一時間もかかるわけで、正直辞めようと考え中。 キッチンで理不尽な理由で店長の怒声を浴び、苛立ちを隠しながら営業スマイルを客に振り撒く。 愛想笑いは御得意だ。 たとえ泣きそうな時でも、イライラしている時でも、客がムカつく態度をとってきても、常にホールでは笑顔でいた。 『ピンポーン』 ベルが鳴る。客の呼び出しの合図だ。 「はい御伺いいたしまーす」 点滅する『19』という文字を確認し、私はハンディを手にとり19番卓に向かった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!