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世界は決まって白黒だった。
色は白と黒と灰色、それ以外に色は無かったのだ。
――ある日用事の為、路地を歩いていると後ろから男がぶつかってきた。僕は男と共に硬い地面に倒れ込んだ。
男は僕に謝ると後ろを気にしながら立ち上がり、走って行った。
僕は服に着いた埃を手で払っていると男が来た道から複数のいかにもなマフィアが走って来て、僕に男が走って来たか訊いてきた。僕が素直に答えると男達はその方向へと男を追っていった。
僕はそのまま用事を済ませるために歩き出したのだった。
――都内某所の古びた映画館に四人の男女が映画を鑑賞していた。
「サイレント映画なんて久々ねぇ」
「しかも白黒って……何という俺得映画っ!!」
「そう言えばさっきの通行人の役者って若き頃のジョーですよね」
「嗚呼、ジョーはこの映画でデビューしたんだよ」
各々が映画に関する感想を言っている。感想は議論になりいつの間にか映画は終わっていた。
「嗚呼……もう映画終わっちゃったじゃない!!」
「しょうがない、また最初から見るか」
――世界は決まって白黒だった。
色は白と黒と灰色、それ以外に色は無かったのだ。
白黒の世界。
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