End of Prologue

1/2
前へ
/144ページ
次へ

End of Prologue

ボクが立っていたのは、見渡す限り拓けた、どこまでも青い、青い海の上だった。 手を伸ばしても届かないほど永遠に。空は命を持って流れては、ボクを空から見おろしていた。 果てしなく広がる世界の中で、ボクはただ一人、そこにいた。 足元に広がる柔らかな緑。だが押し寄せる波は時を刻むように無機的に、ここにあるボクの足元を静かに削り取っては、失われた大地はやがて海へと消えていく。 走り行く雲は、ただボクを見ているだけだった。そしてボクもまた、何もできなかった。 翼を自ら切り落とした、産まれ損ないの哀れな少女。そう言ってみるのも悪くない。 柔らかくて、優しくて。 それでいてどうしようも無いほどに不可避に、大地は抉られてゆく。削り取られて行く時間の中で、ボクは独り夢を見ていた。 それは夢であり、そして願い。 起こしに来る人なんて誰もいない。ただ忘却の海へと飲み込まれてゆく哀れな一人の少女を、見下ろすだけ。 それでも もしこの深い海に飲み込まれ行く時の中で、誰かがボクを起こしに来てくれるのなら ボクは笑っておはようを、言ってみたかったな。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加