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ギンギラギンにさりげなくという言葉ほど、矛盾を孕(はら)む言葉は無いよな。
然り気無くって、めちゃくちゃギンギラギンしてるじゃん、と
屋上の扉をらんま1/2のシャンプーみたいに蹴飛ばして、颯爽登場した木原零花は、眩しそうに太陽を見ながら、そんなことを言った。
「それはお前の妄想だろう」
バレてた。
もちろん実際はそんな派手な登場はせず、普通に扉を開けて、普通に手すりにもたれかかってそう突っ込んだだけである。
「相変わらずマサトは面白いな」
クール、とでも言うべき笑顔で、彼女はそう言った。
滑らかな髪はショートに切り揃えられ、風が、彼女の前髪をふわ――っとかきあげる。澄んだ瞳は透き通るように綺麗で、
昔から変わらない、そんな彼女の姿に、なんだか懐かしさというものが自然と込み上げてきた。
ちなみに屋上は昼休みの僕の指定席だ。だから教室を出るときも、大して怪しまれずに済んだ。彼女に迷惑をかけることもないだろう。
それからしばらく沈黙が世界を支配した。どちらも喋らなかった。どちらも、それ以上喋れなかった。
なんて話すべきなのか、分からなかったから。
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