第一話/9月19日①

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‡ 結局、机の上に書かれたみんなからの寄せ書きをおおよそだが拭き取ることができたのは、三時間目の開始のベルが、ちょうど鳴り始めた頃だった。 きーん、こーん、かーん、こーん の、かーんくらいだったと思う。 で、 チャイムが鳴っている。それはつまり三時間目、ここで言えば化学の担当教師も、既に教壇に立っていた訳だが、特段、何を言うわけでもなかった。 確認するようにただ一瞥――蔑むわけでも、哀れむわけでもなく、それこそ、ただ出席を取るよりも無感情に。少なくとも、その時の先生の目は、そう思わせるものだった。 まぁ、それでも担任なんだが。 才色兼備、眉目秀麗、なんて 普通なら女性の麗しさを示す尺度として用いられるそんな言葉たちも、この男ならば嫌よの一つも溢すことなく、迷うことなくこの男の元へすっとんで行くだろう。 俗に言うイケメンである。 水無包月(ミズナシホウヅキ)。28才、独身(たぶん)。まぁ、言わずもがな、女生徒からの支持率は凄まじく、その熱烈ぶりは個人的には金正日といい勝負なんじゃないかと思ってる。 …… まぁ、生徒思いのいい先生なんだけど。 実家は医院を開いていて、しかも結構大きい。親衛隊とか、そんなものまでいるとか。 正直あまり信じてはないけど
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