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嵐が過ぎた夏の空は、清々しい青が一面に広がっている。
目が開けられないほどの燦然たる光を手でさえぎりつつ、まだ休息を欲する体をむりやり起こすと、支えにした手が砂に埋まった。
なぜか二日酔いのように頭が朦朧とする。汗ばむ額に貼りついたショートヘアをかきあげると、そこに含まれていた砂が、鼠色の作業着の上にぱらぱらと落ちた。
「あれ……?」
ハッとして顔をあげると、ごみの流れついた砂浜が眼前にひろがっていた。
どこまでも青い水平線は、銀のしぶきをきらめかせつつ、おだやかな波の音色を奏でている。
むせかえるような潮の香りは鼻に慣れず、やたら生臭さばかりが鼻についた。
辺りを見回すと、自分と同じ鼠色の作業着を着た九人の男女が目に映った。
立ち上がった金髪の男。
眠りから覚めたばかりの長い髪の女。
座っている男。
まだ寝ている男。
年齢は様々だ。知り合いは一人もいない。
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