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8番、川渕 敦。
スポーツ選手のように髪を短く刈り上げた男だ。
懐中電灯を取った男である。
川渕 敦はアサ子の気配に気付くと振り返った。
「お前、缶詰を取れなかったよな? お前にもコレを分けてやろうか?」
川渕 敦は倒木に群生していたキノコを採っていた。
収容生活が長い者の中には、お節介だと思えるほど他人に構いたがる者もいる。おそらく川渕 敦はそのタイプだろうと思ったが、アサ子は彼の好意を受けたくなかった。
それは、お節介だからとか、好意の裏に罠があるからだとか疑ったわけではない。罠に関して言えば、彼のようなタイプは深いことを考えない。ただ単純に、自己満足で他人に構う。
では、なぜ好意に甘えたくないのか。
森の気配に妙な違和感を感じたのだ。
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