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金髪の男がアサ子の背後に目を向けた。
敬語の使い方を知らないのか、或いはわざとなのか。彼の口調には他人を馬鹿にした気配がある。
アサ子が振り返ると、少し離れたところで黒いスーツを着用した30代後半くらいの男が立っていた。
胸に山田と書かれた名札がついている彼は、農家のお兄さんがたまに着たスーツで気取っているような垢抜けない気配ではなく、年がら年中それ、というような着こなした感のある男だ。彼の背中には迷彩服を着た男二人が立っている。
「そのようですね。説明に入りましょう」
山田は事務的な冷たい声を発した。
アサ子は頭痛を感じ、こめかみを揉んだ。
鉄格子のついた窓。かび臭い匂い。トイレ……。
思い出すのは体に慣れた景色だが、写真のように所々の情景が浮かぶばかりで、鮮明な記憶ではない。酒を飲んだときのように靄がかかっている。
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