プロローグ

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 思っていたよりも彼は近い存在だった。  頭が良くて生徒会の役員をやっている。容姿もいい。それでいて傲慢な態度は一切なく、対等な立場で接してくれる。そのため、私たち女子にとって憧れの的だ。そんな雲の上の存在だと思っていた彼と初めて話したのが今からちょうど一週間前。それからはお昼を一緒に食べたり、帰りも一緒だ。気持ちが乗ってるときに言わないと、言えないまま終わりそうで。それに…… 「和樹はあんたのもんじゃないんだからね!」  物凄い剣幕で迫ってきて、うだうだ喚いてるのは私と同じ吹奏楽部員の日野麻衣だ。台無しだよ。金切り声のように高い声が耳にキンキン響いて痛い。私の中では、フルネームでも四文字だし苗字か名前だけでも二文字で響きが悪いので、『マイマイ』と呼んでいる。これでも四文字だけど、『日野麻衣』よりはいいやすい。 「ゆーかー。聞いてんの?」  こらこら。先輩に向かって「さん」も「先輩」っても付けないのは運動部だったら何されるかわかったもんじゃないよ。文化系でよかったね。まぁ吹奏学部は文化系だけど、他よりは上下関係は厳しい。といってもマイマイは私に対して言わないだけで、他の先輩たちのことはちゃんと先輩と呼んでいる。ああ、こうなってしまったのも全部。
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