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「聞いてるって」
「分かったら和樹には近づかないでね」
『和樹』というのは私の同級生でクラスの……というより学年の人気者で私が想いを寄せている人だ。和樹くんは男の子にも女の子にも好かれるけど、どちらかというと女の子の方に好かれやすいみたいでモテモテだ。そりゃあ恋敵がいることは重々承知だったけど、ここは退けない。
「そんなこと聞くわけないじゃん。マイマイは相手にもされてないみたいだし」
「いいもんっ、和樹は優しいから私のこと見捨てたりしないもん」
「優しいからマイマイのことを見捨てられなくて、和樹くんの負担になってるんじゃないの?」
自分はなんてドSなんだ。でもこんなことを言っても、いつものマイマイにはダメージにならないみたいだけど……今日は違った?
「うぐっ……あんた痛いとこつくわね。……和樹は実はツンデレであたしのことのほうが好きなんだからっ」
目を伏せ気味にそう言い残すと、音楽室を飛び出していった。やっぱいつもどおりだった。
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