プロローグ

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 恋敵っていうのは分かるけど、思い込みが激しすぎてここまでくると可哀想な人に見えてくる。しつこい女は嫌われるのに。数日前から一緒にお昼食べたり、帰ったりしてるんだから私に気持ちが寄っているのは明確だ。でもこんな人望のなさそうな人でも生徒会役員になれるのだから世の中不思議。  そうだ。マイマイの金切り声に頭がやられて忘れてしまいそうだったけど……今日は決戦の日だった。  ――付き合ってください。  なんてストレートな言葉だろう。  和樹くんの後ろを歩きながら、学ランの裾を引っ張って。会ってまだ間もないのに……でも今日が最後の日だし。  ここは音楽室。部活も終わり、私のほかには一人しかいない。妄想してしまったら息が漏れてしまった。 「はぁ」  自分でも分かるくらいうっとりとした声を出す。それと同時に、考えただけでも顔が綻んでしまう。
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