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二人で帰るようになったのは一昨日から。和樹くんも私も友達関係というものがあるので、その都合でだ。電車でもバスでも自転車でも単車でもない。二人とも学校と家の距離が近いので、歩いて通学をしている。それでも三十分ほどかかるから近いとは言えない。だけど、電車通学とかの人に比べれば十分近いだろう。
学校の帰り道。私は和樹くんの二、三歩後ろを歩いている。本当は夕暮れ時がよかったんだけど、今日を逃してしまったら十月までお預け。そんなことは絶対いやだ。和樹くんに気持ちが向いている今言わないと、どんどん離れてしまいそうで。そんなに待っていたんじゃ、私の気持ちも離れていきそうで……。
「永沢と夜道歩くの初めてかも」
和樹くんはそんな呑気なことを喋っている。これから起こることも知らずに。辺りはもう真っ暗で、街灯のおかげで歩ける。
……ふぅ。心の中で息を整えると、私は小走りして前を歩いている和樹くんの学ランの裾を引っ張った。
「ん」
違和感に気づいたのか和樹くんは振り返ると同時に目を細め、甘ったるい声を出した。
「どうしたの?」
この声を聞いてしまうと一瞬で体がほてるのが分かる。多分頬を染めているだろう。でも幸いなことに今は夜だ。気づかれないはず。
あとは言うだけ――。唇をきゅっとかみ締め決意した。おもむろに和樹くんを見る。瞳も和樹くんを一直線に見る。暗くて分かりにくいけど、若干微笑んでいるように見える。
これが私の全て。
「付き合って、ください」
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