ロリコンは保護欲あってこそ

16/19
前へ
/34ページ
次へ
しばらく家族になんと別れの言葉を遺そうか考えていると本日何度目かのチャイムが鳴った。 程なくして保健室に誰かが入ってきた。 カーテンを張ってる為、姿は分からない。 喋り声が少し聞こえた後、誰かが出ていった。 時計を確認したく、起き上がろうとしたとき、カーテンの下からほふく前進で何かが侵入してきた。 「うお!」と小さく驚きの声が出た。 ひょっこり顔を出したのは先の事件で被害を被ったふーちゃんだった。 「…起きてた。残念…。」 残念ながら…。 寝首を掻かして殺れなくてスマン、と心でも謝る。 「起きてたよ、さっきはごめん。大丈夫だった?」 「へいき。でも、…びっくりした。」 「そっか。他のみんなは?」 「友達と帰った。」 「ふーちゃんも俺なんか構わず帰れば良かったのに。」 すると、ふるふる首を振ってベッドの上にちょこんと座る。 そして俺の左手を両手で包み込む。 「にぃが…いい。嬉しかった…ッ。」 一瞬何故俺なのか考えたが、今はそれより先にすることがある。 「…ッ!」 ふーちゃんの頭を撫で、ありがとうと言葉を送る。 「誰も私に構わない。それが普通だった。」 あぁ、そうか。 人とコミュニケーションを取るのが苦手な子なんだ。 それで俺みたいなお節介が印象に残ったのか。 「でも、にぃは…。」 もう、それ以上は言わないで良いよと頭を撫でた。 「さて、そろそろ俺たちも帰ろう。」 そう言って愛犬は職員室かな?と考えていると、ふーちゃんは布団に潜り込んできた。 それもついさっきと同じ、俺の上に乗ってきた。 なにこれ甘い匂いする。 じゃなくて、ふーちゃんは帰りたくないようだ。 なにやら俺を大層、気に召したようだ。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加