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散歩がこんなに良いものとは思わなかった。
そう悟ったのは、ある初夏の夕暮れ時…
いつものように俺は愛犬(犬種:ヨークシャー・テリア)と散歩していた。
日に焼かれたアスファルトは日中陽炎(かげろう)が踊り、容赦無く水分を奪う。
そんな日の夕暮れ。
アスファルトの冷え具合を見計らい、愛犬(室内犬)を連れ出した所から話しは始まる。
俺「夏の日中、アスファルトは地表付近で50度に達する…。」
数ヶ月前に立ち読みで学んだ知識を思い出しながら、散歩のコースを歩いてゆく。
俺「犬にとっては拷問だな…」
何気なく愛犬を見る。
すると足を止めた所存か、ピタリと動きを止めて指示を待つ兵士のごとく見つめてくる。
愛犬は初夏の洗礼を受けているようだ。
少しバテ気味なのか、1割増し舌がだらし無く出ている気がする。
俺「公園の噴水にでも行くか?」
これがまさかの展開になるとは微塵も思わなかった。
―公園
夕暮れとはいえ、まだ明るい割に涼しいようで、近所に住む小学生が集団で駆け回っていた。
すぐに感情が入る。
何事にも素直で一生懸命。自分の気持ちをストレートに言う。
その光景を見て、幼少の頃はリミットも枷(かせ)も無い自由そのものだったな…と無駄に過去を思いながら噴水の蛇口をひねった。
なにやら逃げ惑う『キャー』に混じって
『襲われる~』『らめえぇぇ!』とか聞こえたんだが気のせいだよな…?
ただ、『こおり鬼』と思われる遊びをしているだけのようだが…。
少し声の主の将来が不安になったところで、ふと愛犬を見る。
水分を補給し一段落、といったところか。
回復したのを確認し、公園のブランコから立ち上がろうとした時。
「あー!」
「かわいー」
先程の小学生がこちらに気付いたようだ。
ずっと同じ場所で座っていたが、今気付くとは。
この時俺は『人は1つの事にしか集中出来ない』という人間の性質に妙な感心をしていた。
その場の小学生が遊びを中断し、「犬、触って良い?」と訊いてきた。
勿論、共に人懐こい性格の愛犬は尻尾を振っていたので好きに触らせた。
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