カオスノコンゲン

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どこかの見るからに豪華な一室。 壁、床、天井までもが黒で統一されているその部屋には、人工的な光は一切なかった。 カーテンもなく、八畳にもなるだろう大きな窓から入る月の光だけが、部屋の中を照らしていた。 その大きな窓を背にして、部屋の奥に存在するこれまた大きなデスクからは、ひと目に高価なものと言える赤い絨毯が両開きの黒い扉へと続いていた。 そして、誰もいないこの黒い部屋へひとり足音をたてながら近付いていた。 ゙タカ… タカ… タカ… タカ…゙ 聞いていると恐怖を覚えるのは、気配が全くしないからだろうか、はたまた生き物にしてはあまりにも規則的すぎるせいだろうか。 その足音がとうとう、部屋へ入って来る。 入って来た者は、まるで闇から生まれたような黒い影を侍らせ… ゆっくりと、黒いデスクへ向かっていた。 そしてやっと月の光がその者を照らした。
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