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食事が終わって食器を洗い終わる頃、ジゼルが外に行く準備を促した。あたしも頷いてホルスターを腰に付ける。目指すのは、歩いて少しの所にある森。
帰る方法がまったくわからないと知ったとき、他の場所ならもしかしたら、とジゼルが呟いた。
「他の場所って?」
「さぁ、そこまでは……昔は他の星へ行く手段を考えていた場所もあるし、もしかしたら、だけれど……」
つまり、この街に手がかりはないけど、この世界のどこかには、ってことらしい。
「あ、あたし、行きたい」
「え?」
「どこかわかんないけど、とりあえず、世界中見たら見つかるかもしれないんだし……だったら世界中見てくる!」
「それは、旅に出る、ってこと?」
「あ、うん……そっか」
旅に出る、って、なんか現実味ない響きだけど……まぁ、そういうことになるんだよね。
「ダメよ」
しかし、その案はばっさりと切られた。
「な、なんで!?」
「なんでって……1人で行くつもりでしょう? あなたのいた世界がどうだったか知らないけれど、賊や魔物を舐めないほうがいいわ。その様子だと、戦う術もないようだし」
「ま、魔物……?」
「ええ。街の中には普段いないけれど、少し外に出ればすぐに襲われるわよ」
「……どうすればいいの?」
「……あくまで行く気なのね」
呆れている、というか、怒っているような声音と視線。少し怯みそうになるけど、諦められない。
別に今の生活が嫌なわけじゃないけど、やっぱりここはあたしの暮らしてた場所とは違う。
残してきた人……っていうのも変だけど、あたしにも家族とか友達とか、そういう人たちはいる。何事もなかったように消えるなんてできない。
「……わかったわ」
はぁ、と今度こそ呆れたように息を吐いてジゼルが腰に手を置く。
「あなたが元の場所に帰りたいと思うのは当然だし、その手段を探すのも妥当だとは思っているわ。けど、死んでしまえば元も子もない」
「死ぬ、って……」
「脅しでも何でもなくよ。多少の情はある賊もいるけれど、基本的に奴らは容赦しない。魔物に至っては殺すために襲ってくるのよ」
「…………」
息を飲む。
ジゼルに反論したはいいけど、さすがに怖い。……死ぬとか、結構普通に言っちゃうんだ……。
だから、とジゼルが続ける。
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